摂食障害に関して知っておきたい知識
摂食障害の回復や不食・過食のそれぞれの状態に関して、知っておきたい情報をまとめてみました。当事者や家族や周りの方に知っていただければと思います。
回復について
年単位で少しずつ回復していくもので、本人、家族、治療者が一緒に対応を工夫していくことが望ましいです。
回復といっても、本人、家族、治療者でそのイメージが違うので、何を回復とするかはよく話し合っておくことが大切でしょう。
本人のわがままだと持ち出してくる家族に対しては、わがままと癖と病気が入り混じったようなものと認識してもらえるように伝え続けます。本人自身だけではどうにもできない特殊なわがままであり、家族や治療者の援助が必要なものです。
この障害は本人だけではなく、家族もとても疲れます。家族が疲れ切ってしまわないようにすることが大切です。
回復は直線的ではなく、波状によくなっていきます。ホッと一安心したころ悪化するようなこともあります。これは繰り返されていきますが、悪い状態から立ち直るのは、次第に早くなっていくでしょう。
抑うつ、無気力がともなうことがあります。真の回復のためには、避けては通れないことです。このようなことを抑うつやその予兆をみせ始めたときに知っておくと助けになると思います。
本人は食事と体重の増減にこだわることによって、自分をかろうじて支えているので、食事への病的なこだわりが減っていく軽快期・回復期は、本人にとっては苦痛を伴うものになります。このころは自分の立ち遅れや能力の限界が見え始め、社会に参加することへのもろもろの恐怖が身近なものになってくる時期です。さらに親が安心して、性急に本人を世間に通用させようとする動きを示すと本人にとっては最大の恐怖を生むことになりかねないので注意が必要です。
不食時
無月経は当然のことで栄養失調に陥っている身体を保護するために起こるものです。摂食障害は精神科での治療になります。しっかり精神科のドクターと信頼関係の上で状態を報告できているのであれば、産婦人科にかかる必要性はありません。
全くたべないと固く閉ざしている人より、食べたいが食べれないという人の方が多いと思います。食べようとしている努力を認め、また親を心配させまいとする一種の親孝行と再定義することはできると思います。
「食べたものが全て肉になる気がする」という言う患者に対して、その感覚を大切にする一方で、その根拠のなさは説明しておきたいものです。おしっこしたり、うんちしたり、汗かいたりと外に出す身体の仕組みがあることを伝えていきます。
「食べるとすぐお腹いっぱいになる、お腹がふくれる」と言う人に対しては、飢えに苦しむ子供の写真を例に、手足がミイラみたいに細いけど、お腹がけまんまるに出ている様を知ってもらいます。それと一緒だという説明は、理解が得られるやすいと思います。栄養失調のために胃・腸・腹の筋肉が薄くなっていて、食物をしめつけておくだけの力がないことなども合わせて伝えてもいいかもしれません。栄養出張による脳や肝臓の萎縮もありますが、脳の可逆性は理解しておきたいことです。また、脳の活動のためにはグルコースが必要であることも知っておきたいことです。
過食時
本人や親は、とても強い言葉で表現すると、人間失格、あさましい、意地汚い、動物的といった評価をするかもしれません。その気持ちは気持ちで受け止めますが、摂食に関することや要因となる苦悩はすぐれて人間的な営みです。そのことはぜひ伝えていきたいことだと思います。食事量と自己の体重とを自己の思い通りにコントロールしたい欲求そのものがとても人間的なものです。
過食の詳細をはっきりさせていく、過食の症状をはっきりさせていく中で、自分だけにみられるものではなく過食症の症状一般であることをしっかり分かることはとても大切だと思います。本人にとっても家族にとっても過食はとても辛いものあることも認識しておきたいことです。
過食症の流行とその説明は両親の安堵に役立つことがあります。
抑止策や抑制を言葉で伝えることはあまり有効とはいえません。本人への負担も強く、できない自分への葛藤が強くなる上に、自分一人の意思の力だけではなんともならないことが多いからです。
金銭的なことや過食後の後始末については、本人としっかり話し合う必要があるでしょう。話すタイミングや本人の状態はしっかり見ていきたいですが、避けては通れません。
ある程度の過食・嘔吐のきっかけやその時の気持ちや考え、互いの要望が分かった時点で、親から本人への直接的介入がはじまってもよいでしょう。
以上、知っておきたいこととして列挙してみました。ぜひ参考にしてみてください。
参考
過食症サバイバルキット―ひと口ずつ、少しずつよくなろう
家族ができる摂食障害の回復支援
摂食障害治療ガイドライン
摂食障害 (エビデンス・ベイスト心理療法シリーズ)
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