大人の愛着(アタッチメント)スタイルが人間関係に及ぼす影響

人間関係に悩んでいる人はとても多いです。悩みの多くが人間関係に由来するものです。ここでは、大人の愛着スタイルが人間関係にどのように影響しているかを解説していきます。自分の愛着スタイルを理解して、適切な対処とするヒントにしていただけると嬉しいです

愛着とは

愛着とは、養育者との情緒的な交流


愛着(アタッチメント)とは、養育者との情緒的な交流のことです。安定した愛着が子どもの成長には不可欠なものです。

安全基地とよく表現されますが、子ども時代に親が安全基地として子どもを守る。子どもは親の庇護のもとで安心して過ごすことができると健全に成長していくことができます。

親の関わり方が回避的だったり、不安定だったりすると、子どもは不安を感じやすくなったり、混乱しやすくなります。

子ども時代における親の関わり方は心理学においてとても重要なものとしてみられています。

愛着スタイル

愛着に関する問題は、育児や子どもの問題として表出することが多くありますが、愛着のスタイルは、成人においてもさまざまな場面で影響を及ぼします。

まずは、成人の愛着スタイルの4つの種類をご紹介します。あなたはどの愛着スタイルだと思いますか?ぜひ考えてみてください。

安定型の愛着スタイル

安定型の愛着スタイルは、親密な友人関係を大切にしたり、自律性を保ちながら対人関係を築くことができます。人に対して、信頼感があり、身近な人と関係を作り、適切にサポートを求める力があります。

回避型の愛着スタイル

回避型の愛着スタイルの人は、人とあまり関わらないようにします。人と一緒にいたい欲求が低く、過度に自律的で、親しい関係に居心地の悪さを感じます。他者に不信感があり、人を非難しがちです。

親密な関係性を重要視せず、独立心や自律性を重要視します。また、自分の感情を制限することがあります。

不安型の愛着スタイル

人と親しい関係になることや一緒にいることに強い欲求があるのですが、自律性が低く、分離不安や人間関係への依存性が高いタイプです。人間関係において、怒りやしがみつきや嫉妬などを表現することがあります。

混乱型の愛着スタイル

アタッチメントの問題について、統合されたパターンがなく、不安と回避の態度や行動が一貫性なく混在します。突発的な怒りを表すことがあります。

愛着スタイルと人間関係

愛着スタイルが成人してからの人間関係やパートナーシップに影響しているという研究報告があります。

それぞれの愛着スタイルに特有の人間関係についてご紹介していきます。

パートナーシップ

愛着スタイルとパートナーシップについて。

不安型で拒絶への恐れが強いスタイルの人は、パートナー関係を持たず、ひとり親であることが多いようです。

回避型で人との関わりから身を引いているタイプと不安型で分離不安が高いタイプは、パートナーとの関係にサポートが欠如していることが多く見うけられるようです。

また、分離不安が高い女性は、パートナーとの関係が暴力的になりやすいことも知られています。

回避型で高い不信感と怒りを感じやすいタイプも、葛藤的なパートナーシップを持つことが多いようです。

混乱型の女性のパートナーは、反社会行動や犯罪者が多く見られたという報告があります。

いずれも、パートナー関係の改善や新しいサポーティブなパートナーシップがアタッチメントが肯定的に変化することの要因になります。

家族や友人のサポート

回避型のタイプは、家族や友人に心の内を打ち明けられる相手を最も持ちにくいようです。

身近に心のうちを打ち明けられる人を得ることが、アタッチメントが肯定的に変化する一つの要因になります。

非安心型の愛着スタイルへの介入

では、不安や回避型の愛着スタイルを持つ人はどうすればいいのでしょうか。アタッチメントの肯定的変化を促すいくつかの心理療法についてお伝えしていきます。

カップル療法

カップル療法は、安全な情緒的な関わり、慰めと支持の促進に焦点をあてます。情緒的な反応のコミュニケーションを重視し、情動の調整や応答性を育てることへの恐れを扱っていきます。

治療の場が安心の基地となり、はっきりとした応答性や近づきやすさが作られるように関わっていきます。

カップル療法につ

いては、こちらの記事も参考にしてみてください。

夫婦・カップルカウンセリングは効果があるのか?

家族療法

感情焦点化家族療法では、アタッチメントに関連する感情を再処理し安心型に近いものになるように努力します。コミュニケーションや感情の悪循環に名前をつけて、その影響をコントロールしていきます。

メンタライジング

メンタライジングとは、自分や他者の行動を、その背景にある心理状態から解釈して、理解することです。

このメンタライジングの能力を増すことで、感情や関係性を安定させ、情動を制御し、対人関係をポジティブに変化させていきます。

おわりに

いかがでしたでしょうか。愛着スタイルのポジティブな変化は時間を要することです。しかし、地道に取り組むことできっとよい結果を得られることと思います。そのための方法もいくつか紹介しましたが、一人で行うより、専門家に相談されることでより実現可能性が高まると思います。

参考文献
アントニア・ビフィルコ (著) アタッチメント・スタイル面接の理論と実践―家族の見立て・ケア・介入 金剛出版

この記事をシェアする