トラウマを思い出したくない…避け続けるとどうなる?臨床心理士が解説
トラウマの記憶を思い出したくない、関連する場所や話題を避けたい——そう感じるのは、とても自然な反応だと思います。PTSDの回避症状としても知られていますが、避け続けることで本当に楽になるのでしょうか。今回は、トラウマの回避行動とその影響、そして回復への道筋について、臨床心理士の視点からお伝えします。
トラウマを避けたくなるのはなぜ
トラウマを思い出すと、フラッシュバックや悪夢、強い不安や恐怖が襲ってくることがあります。そんな苦痛から身を守るために、トラウマに関連する状況や記憶を避けるのは、神経系が自分を守ろうとする自然な反応です。
PTSDの症状のひとつとして、回避症状があげられます。トラウマを思い出させる場所、人、話題、活動を避けることで、一時的に苦痛から逃れられるように感じるのです。
避け続けるとどうなるのか
一時的には楽になるが、長期的には…
回避は、短期的には有効に感じることが多いと思います。トラウマの記憶に触れなければ、フラッシュバックや強い感情を避けられるからです。
しかし、避け続けることで、生活の幅がどんどん狭くなっていくことがあります。避けたい場所が増え、避けたい人や話題が増え、やがて日常の多くの場面で緊張や不安を感じるようになるケースもあると思います。
トラウマの記憶は処理されないまま残る
トラウマの記憶は、避けているあいだも心の中に残り続けます。処理されないままの記憶は、些細な刺激でも反応しやすい状態を保ち、過覚醒やイライラ、睡眠の問題などにつながることがあります。
「忘れたいのに忘れられない」「避けているのに、ふと思い出してしまう」——そんな経験をしている方も多いのではないでしょうか。
たとえば、信頼していた人からの裏切り、いじめや虐待の経験、親子関係の不全など。これらの傷つき体験がその後の人生に大きなマイナスの影響を持つことがあります。またやっかいなことに、そのような出来事から長く時間が立っていたとしても、強く影響されていることに、本人は気付いていないことも多くあるように感じます。
解離という形での回避
意識的に避けるだけでなく、解離と呼ばれる無意識の回避もあります。現実感が薄れる、自分が自分でないような感覚、記憶の空白など。本人も気づかないうちに、心が苦痛から守ろうとしている状態かもしれません。
避けることは悪いことではない。ただ、避け続けると生活が狭くなっていく
回復への道筋
回避をやめて、いきなりトラウマに向き合え、ということではありません。回復にはプロセスと順番がとても大切だと感じます。
ステップ1 気づくこと
深く傷ついていること、避けていることに気づくことがスタートになると思います。
ステップ2 安全感の確保
トラウマの記憶に触れる前に、まず安全・安心な場とリソースを育てることが大切です。カウンセリングの環境やカウンセラーとの信頼関係が、安全感を支えます。安心感の構築は一朝一夕ではできません。だからこそ、カウンセラーとの良好な関係性がとっても大切だと考えています。
ステップ3 リラクゼーションスキルの構築
トラウマを思い出したときに、自分を落ち着かせるスキルを持っていることが大切です。呼吸法やグラウンディングなど、自分に合った方法を少しずつ身につけていきます。
ステップ4 無理のないペースで向き合う
安全感とスキルが整ってから、トラウマの記憶や感情に、無理のないペースでアクセスしていきます。効果のある方法でも、タイミングを間違えると悪影響があることもあるし、順番を間違えると効果がなくなることもあると思います。
専門家のサポートについて
トラウマの回避症状に悩んでいる方は、一人で抱え込まず、専門家に相談することをお勧めします。金沢心理カウンセリングルームJONでは、リソース構築、神経系に配慮したソマティックなアプローチ、パーツアプローチ、感情にフォーカスしたアプローチなどを統合的に活用し、安心できる関係性の中で一歩ずつ進めていきます。
カウンセリングをしていると、「あ、あのことが、こんなにも自分に強く影響していたんだ。」と大きな驚きをもって気づきを得る方がいらっしゃいます。気づくことが、回復のスタートになると思います。
癒しや回復には一定の時間が必要なこともあるので、無理に進めるということではなく、何が必要なのかをよく見ながらちょうど良いペースでカウンセリングを進めていきます。
おわりに
いかがでしたでしょうか。トラウマを避け続けることの影響と、回復への道筋についてお伝えしてきました。避けたい気持ちは自然なことです。大切なのは、一人で抱え込まず、専門家のサポートを借りながら、自分に合ったペースで進んでいくことだと思います。
- トラウマを避けるのは自然な反応だが、避け続けると生活の幅が狭くなる
トラウマの記憶は処理されないまま残り、過覚醒や不安につながることがある
安全感とリソースを育ててから、無理のないペースで向き合っていく
お知らせ
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